バジルの双葉についで
パクチーからも新芽がちらほら。
そうめんも解禁。
衣替え。
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津田 真さんが『シンクロ二シティー』のアルバムレヴューを書いてくれた。
こんな初夏のはじまりの日には
うれしい知らせが届くものだなぁ!
『ポップスの夢、夢のポップス』 津田 真
優れたポップスは聴き手の中に様々な感情を呼び起こさせる。そして最終的には言語化を拒む。溜め息や微笑みと共に「…いいねぇ」としか言えない、音楽ファンであれば誰もが経験するであろう、あの感覚。
mitsumusicaのファースト・アルバム『シンクロニシティー』には、まさにそれがある。
mitsumusicaは、かちむつみ(pf,vo,songwriting)、宮田まこと(dr,g)、小島麻貴二(b)からなるトリオ。スタイルとしてはジャズのピアノ・トリオと同じだが、このアルバムにおいて、またライブにおいても、ベース小島はエレキとウッドベースを持ち替えるし、ドラム宮田はギターも弾くなど、曲によって多彩な表情を見せる。
バンド名の由来については、どうやらライブのMCでのお約束となっているようなので、ここでは敢えて伏せる事にしよう。
最初の印象としては、大貫妙子や矢野顕子を連想したりしたのだが、試しに二十歳の音楽ファン達に聴かせてみると、キリンジやクラムボンといった名前が出てきた。それはつまり、聴き手によって思い浮かぶ固有名詞こそ違うが、日本のポップス史上の最も良質な部分を感じさせるという事だ。
その上に、ビバップ以前のジャズ(日本のミュージシャンでこの辺を取り上げる人は少ない)などのフレイバーを振りかけて、mitsumusicaは独自のサウンドを作り出す。
ライブでは、そうした要素をよりワイルドかつ躍動的に展開しているのだが、このアルバムではまず「日本のポップス史上最も良質なサウンド・その最新版」を形にする事に成功している点に注目したい。
実はライブで披露されてからアルバム収録までに、かなりアレンジが変わった曲もある。煮詰められ、凝縮されたアイデアは、ポップスとして普遍的な強度を生み出した。
結成から僅か1年程でここまでの達成とは、今後が実に楽しみなグループなのである。
果てしなく細分化され、歴史性を剥奪されてゆく現在のポップス・シーンにおいて、復古主義とは違う形で、伝統と革新がせめぎあうポップスの音を軽やかに鳴らすグループ、mitsumusica。『シンクロニシティー』には、ポップス史の先にあるもの、つまり未来のポップスまでもが見え隠れしている。その、今にも掴めそうな新しいポップスのヴィジョンは、きっとリスナーを虜にするに違いない。
ちなみにこのアルバムは自宅録音である。そう聞いただけで、おっと反応するポップマニアもいるだろう。けれど、マニアのものだけにしてはいけない。この音楽は、どんな人や場面に対しても開かれているのだから。
mitsumusicaとは、全てのポップスが夢みる音楽だ。
そしてそれは我々リスナーが求める、夢のポップスなのだ。
☆☆☆☆☆
1.はじまりは突然に
シャッフルから始まるアルバムなんて久しくなかった。90年代以降ほぼ消滅してしまったこの素敵なリズムを復権させる所から、このアルバムはスタートする。雨上がりの午後、初夏のそよ風、そんなわくわく感を持ったオープニング。ゲストにピアニカ前田参加。
2.さすらい
70年代初期のキャロル・キングを彷彿とさせるような、穏やかさと厳しさが同居した曲。ゲストに橋本歩(チェロ)参加。
3.ダンデライオン
このタイトルがなかったとしても、タンポポの綿毛が風に舞う様子が目に浮かぶ。ココロがほぐされます。
4.マカロニウェスタンの白いベイビーグランド
ごく短い、遊び的なインストだが、これがある事で流れがグッと締まっている。センスの賜物。
5.12月のラプソディー
発表された瞬間からエヴァーグリーンな名曲、というのが時々あるけれど、この曲もそのひとつだと断言したい。至高の1曲、未来のスタンダード。
6.ひとりぼっちの丘の上
ジャジーで可愛いサウンドに乗って、孤独と切ない焦燥感が歌われる。そんな内容なのにサラッと聴かせてしまう、かちむつみのキュートなヴォーカルが冴える。
7.雲が空をかけてゆく
この曲はまるで、はっぴいえんどと『HOSONO HOUSE』を繋ぐミッシングリンクである。しかも狙った風な所がない。びっくりします。もちろん、そんな曲が良くない訳がないのです。
8.風の噂
ボサノヴァ風、だがボサノヴァとの距離の取り方が良い。良い意味でボサノヴァにのめり込まずに、クールなポップスとして結実している。
9.二人の休日
ゆったりしたワルツ。こういう曲こそ下手な言語化を拒む。困ったので、ハックルベリィ・フィンに聴かせて感想を訊いた。
「歌ってることはわかんないけど、おれ、嫌いじゃないよ」と言って、この曲を聴くため用にハンモックを作ってくれると約束してくれた。「筏(いかだ)よりハンモックだよな」と少し照れながら。
10.蝉の鳴く日
ガットギターと歌のみによる、繊細で、大いなる予感に満ちた小品。歌い終わりの微妙なメロディの外し方が、たまらなく良い。
11.丸い地球のセレナーデ
セレナーデ、という題だが、レクイエムのようにも聴こえる。あまりにも悲しい歌詞だが、歌の表情は限りなく優しい。眠れぬ夜に灯すローソクのような1曲。
12.ディキシーの白いベイビーグランド
思わず微笑んでしまうユーモラスなインスト。M-4と対になっているのだが、両者がどういう関係なのかは聴いてのお楽しみ。
13.悲しみの街角
アルバムのクロージングに相応しい、スケールの大きなワルツ。
秘密のエージェントを通じて、デル・シャノンから感想が届いたので引用する。
「今、ハルキ・ムラカミの短編集を読んでるんだが、この曲を聴いて、都市生活を営む現代日本人の心の在り方が、より理解出来たような気がするよ。都市は孤独と悲しみを内包しているが、私たちが培ってきたロックンロール音楽は、そこに希望の灯をともしてくれる」
「物語のはじまり」を歌って始まったアルバムは「悲しみはいつか/涙になり雨になって/それぞれの物語と出会うだろう」と締め括られて終わる。
mitsumusicaという物語は、まだ始まったばかりだ。もしもあなたがこのアルバム『シンクロニシティー』と出会ったなら、新しい物語はそこから始まる。
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